10代に響く言葉たち

 当欄からみると「折々のことば」は軒を接する隣家のよう。言葉の泉の豊かさに感心する毎日だが、さっそうと横書きで欧文を紹介されると嫉妬が頭をもたげる。「いつか紙面で」と書きとめた詩歌が先に使われると心はやはり湿る。

 まぶしくも気になる「折々のことば」を中高生が自作するコンテストに今年は2万7千人余が挑んだ。詳しくは本日の紙面に譲るが、当欄でも胸に響いた作品を紹介したい。

 まずは受験生に捧げる名言から。「Dは『だめ』のDじゃなくて、『大丈夫』のDとよ」。福岡県の中3生が中学受験前、年長のいとこに言われた。志望校の合格判定はD、D、D。いとこの言葉で「まだ間に合う」と思い直し、みごと受かった。

 沖縄県の中2生が挙げたのは認知症の進む祖母の言葉だ。「脳では忘れるかもしれない。でも、心では絶対に忘れないよ」。孫の名も家への道も忘れる姿に「どうせ、私と過ごしたことも全部忘れるんでしょ」と言ってしまった時の返事という。

 「男は女を裏切るし、女は男を裏切るけれど、科学は私を裏切らない」。ドキッとするひと言を選んだのは横浜市の中1生。科学の先生のそのまた先生の言葉である。男女の裏切りなど人生経験の少ない自分にはわからないが、この言葉は心に直球で届いたと説明する。

 当方も日頃せっせと名文句を手帳に集めているものの、中高年好みの歴史や政治の領域にかたよりがち。10代の感性がすくい上げた言葉の宝石に接する幸せをかみしめる。

     1月6日付 朝日新聞 「天声人語」より

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